東京工業大学と東京応化工業株式会社は、線幅7.6 nmの半導体微細加工を可能にする高分子ブロック共重合体の開発に成功しました。この技術は、半導体回路パターンのさらなる微細化と高密度化に貢献し、今後の電子デバイスの高性能化に大きく寄与することが期待されています。
本研究では、極性官能基の割合を精密に制御することで、従来の技術では難しかった線幅7.6 nmの回路パターンを作成することに成功しました。これにより、半導体基板上でのナノスケールの微細加工がさらに精密に行えるようになり、次世代半導体の製造において大きな進歩を遂げました。
従来、最先端技術として13.5 nmの波長の光を用いるEUVリソグラフィがありましたが、従来の露光装置では線幅10 nm以下の微細加工が難しく、不均一なパターンが生じることが課題でした。今回の開発は、分子の自己集合を利用するボトムアップ型技術を採用し、この問題を解決しました。
今回の研究では、高分子ブロック共重合体という材料を用い、分子の自己集合によってナノメートル単位の構造を形成しました。このミクロ相分離構造は、半導体基板に回路パターンを描画するための鋳型として利用されます。
特に、ポリスチレン(PS)とポリメタクリル酸メチル(PMMA)のブロック共重合体が採用され、これにより従来技術よりも高い精度での垂直ラメラ構造を形成することに成功しました。これにより、より精密な回路パターンの形成が可能となり、半導体製造技術の進展に大きな貢献を果たしています。
今回の技術は、電子デバイスのさらなる高密度化と高性能化を実現するための大きな一歩となります。スマートフォンやクラウドサービスを支える電子デバイスの性能向上だけでなく、人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)分野においても、この技術は重要な役割を果たすことが期待されています。
今後は、工業的なスケールでの製造に向け、300 mmのシリコンウエハ上での機能評価が進められる予定です。これにより、量産技術としての実用化が現実のものとなるでしょう。これが実現すれば、半導体産業全体に大きな革新をもたらし、業界の競争力をさらに高めることが期待されます。
本研究成果は、次世代の半導体製造プロセスにおいて重要な位置を占め、社会全体の技術革新に寄与するものです。線幅7.6 nmの微細加工技術は、EUVリソグラフィによる限界を超え、より高性能な半導体回路を作り出す可能性を秘めています。
この技術を基にしたデバイスは、コンピュータの処理能力を向上させるだけでなく、エネルギー効率の高いデバイス開発にも寄与し、地球環境に優しい技術としても注目されています。
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