露光装置の入れ替えを検討する際、装置本体のスペックだけでなくペリクルの性能にも注目する必要があります。ペリクルの品質は歩留まりやスループットに直結し、量産ラインの生産性を大きく左右します。
ペリクルとは、半導体やFPDの製造工程でフォトマスクに装着する薄膜の防塵カバーです。LSIやFPDの露光はクリーンルーム内で実施されますが、微細なゴミや埃を完全に排除することはできません。フォトマスク表面に異物が付着すると、回路パターンとしてウェハーに転写され欠陥品の原因になります。
ペリクルを装着すると、膜とマスクの焦点面(フォーカス)からの距離により異物の影響を回避できます。ペリクル膜上にゴミが付着しても、露光の焦点面から外れるためウェハーへは転写されません。歩留まりを維持するうえで欠かせない部材です。
露光波長がi線・KrFからArF、EUVへと短くなるにつれ、ペリクル素材は有機系から無機系へ移行してきました。波長が短いほど光が物質に吸収されやすく、透過率と耐熱性の両立が求められます。
ArF露光(波長193nm)ではフッ素系ポリマーを基盤とした有機系ペリクルが主流です。ArF光に対する高い透過率と優れた加工性を兼ね備え、量産ラインの安定稼働を支えています。
EUV光(波長13.5nm)は従来の有機系素材に吸収されやすく、十分な透過率を確保できない課題がありました。そのため、EUV露光でも使えるシリコン系やCNT(カーボンナノチューブ)系素材の開発が進んでいます。
量産ラインの安定稼働と歩留まり向上に直結するペリクルの性能指標は、光透過率・クリーン度・耐久性の3つです。装置スペック比較の際にこの3指標をチェックリストとして活用すると、選定判断がしやすくなります。
ペリクル膜の透過率が低いと露光に必要な光量が減少し、スループットが低下します。EUV向けでは90%以上の透過率が求められ、三井化学は92%以上のCNTペリクルを事業化しました。imecとの協業では94%以上の達成を目標としています。
回路の微細化が進むほど、許容される異物サイズは小さくなります。三井化学はクラス1のクリーンルームでクリーンロボットシステムを導入し、安定した品質を実現しています。リンテックや信越化学も独自のクリーン技術で高品質なペリクルの製造に取り組んでいます。
EUV露光の高エネルギー環境では、高い耐熱性と機械的強度が不可欠です。CNT素材は鋼鉄の数十倍の引張強度を持ち、高温下でも安定した性能を維持します。耐久性の高いペリクルはダウンタイム削減やランニングコスト低減にも貢献します。
ペリクルの性能は露光装置の生産性と歩留まりに直結します。量産目的の装置選定では透過率・クリーン度・耐久性の3指標をスペック比較の軸に据え、研究目的であればメーカーの技術力を判断基準にするのが有効です。自社の導入目的を明確にしたうえで、ペリクルの性能まで踏み込んだ比較検討を行うことが、装置選定の精度を高めます。
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