中国では「最先端EUV露光装置の試作機を完成させた」という話題が複数メディアやSNSで報じられました。完成させたのは北京、ハルビン、長春の3つの研究機関チームで協力した結果のようです。中華科学員の前院長、白春礼氏が2023年4月13日に吉林省長春市の中国科学院付属長春光学・精密機械・物理研究所を訪れて、露光装置の開発状況を確認したというものが根拠。結果、数年のうちにEUV露光装置の量産も視野に入ったようです。
ただし、注意点があります。あくまで複数メディアやSNSが報じたものであり、中国共産党系の主要メディアではそのようなニュースは報じていません。その点で、まだ噂レベルであり、明確に「開発に成功した」とは簡単に断定できない状況です。一方、確かに先端プロセス向けEUV露光装置のプロトタイプ開発自体は実際に行っているのは事実という話も出ています。
中国は2002年に中国初となるEUVリソグラフィ原理確認装置を開発しました。また、0.75nm RMSより優秀な波面収差を持った2ミラーEUVリソグラフィ対物レンズシステムの開発に成功したとい実績もあります。EUV露光の研究は続けられており、2017年に32nmプロセス対応EUV露光装置の試作の成功、5nm向けEUV露光装置の開発を続けてきたのは事実です。
EUV光源もハルビン工科大学で研究開発し、長春研究所とも協業体制を構築して進められています。他にも、2014年清華大学のチームがEUV露光装置向け超精密マスク/シリコンウェハステージを開発し、Huaweiの研究所も共同開発に参画しており、積極的にEUV露光の研究は進められているのです。
中国が最先端EUV露光装置の試作機を完成となってもおかしくない材料は他にも多々あります。近年では2022年にHuaweiにより、EUV露光装置と主要コンポーネントをカバーする特許出願をしました。波長13.5nmのEUV光源、反射鏡、露光装置、計測技術は、EUV露光装置の重要な構成要素を網羅しています。
Huaweiでは他にも自社開発EDAツールの7nm検証済み、半導体業界向けのエッチング装置を製造する企業、Zhongwei Semiconductorは5nmプロセス用エッチング装置を販売、露光装置メーカーSMEEが液浸ArF露光装置の開、ArF露光装置の開発など多数の中国企業が露光装置に関連する装置などを続々開発しているのです。
2023年現在、アメリカによる対中半導体規制により中国の半導体は厳しい状況でした。その問題を解決するために、中国は自主開発という手段を取っているのです。海外メーカーにも中国進出を奨励しています。今後、中国が半導体や露光装置の分野でどんな存在感になるのか注視されています。
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