CMPとは、薬品による「化学的な研磨」と砥石による「機械的な研磨」を用いて平坦化する技術で、英語の化学機械研磨「Chemical Mechanical Polishing」の頭文字を取った言葉です。
半導体ウエハを「キャリア」と呼ばれる部材で保持し、化学物質と砥粒を含んだスラリーを流しながらウエハと不織布製の研磨パッドを接触・回転させることによって、ウエハを平坦化します。この研磨技術は、1990~2000年代にかけて技術革新が起こり、近年の半導体デバイスの微細化や多層化において重要な役割を果たしています。
半導体ウエハは、物理的に単純な研磨をかけるだけでは不十分です。傷や転位などの重大な機械的損傷が起こるリスクがあります。また、半導体チップの配線回路の微細化と多層化が進む現在では、原子レベルで滑らかなウエハが求められています。
ウエハが滑らかでないと、小さな歪みが層になって重なり、相応の歪みになって、平坦度を達成できなくなります。CMPがないと、超大規模集積回路「ULSI」の製造もできないと言われているほど重要な技術です。
CMPで使用するスラリーには化学薬品と砥粒が含まれています。化学的作用と機械的作用を用いながら研磨するためで、化学薬品で研磨表面を変質・溶解させることで、砥粒による機械的研磨がしやすくなります。
ウエハ上の絶縁層のシリコン酸化膜(SiO2)を削りたい場合、SiO2を溶かすアルカリ溶液を用いて表面を滑らかにするといった具合です。スラリーでウエハ表面を変質させると、研磨剤単体で研磨するよりも加工速度が上がるほか、品質が向上する効果もあります。
CMPが登場したのは1980年代初めごろ。当初から他の手法と比べて平坦化の精度に優れていましたが、研磨の過程で多くの「ゴミ」がでる問題があり、クリーンルームの外にCMP専用の部屋を設ける必要がありました。
その後、研究・開発が重ねられ、装置内で研磨・洗浄・乾燥まで行えるCMPを荏原製作所が開発。他の装置同様、クリーンルームに設置できるようになり、きれいで乾いた状態のウエハを次のプロセスに送れるようになりました。
CMPは、ウエハを保持する研磨ヘッドや不織布製の研磨パッド、検波パッドを載せる研磨テーブル、薬液や砥液を滴下するノズル、研磨パッドの目詰まりなどを解消するパッドドレッサーで構成されています。研磨したい面を下向きにして研磨ヘッドに装着し、圧力を加えながらヘッドとテーブルを回転させるとウエハが磨かれていきます。
これらの研磨システムの他、洗浄システムやエンド検出、制御・伝送、材料供給・廃液処理、環境制御など複数のシステムが搭載されています。
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