露光装置を比較する際は、露光方式だけでなく、焼付波長による違いにも注目して下さい。ここでは、紫外線の波長の一つであるArF線と、ArF線の露光装置を扱っている主なメーカーをご紹介します。
より微細な露光を行うためには、短波長の光源が必要であり、現在は高圧水銀灯のg線、i線、KrF線を経て、ArF線などが主流です。ArF(アルゴン・フッ素)とは、波長が193nm(0.193 μ m)のスペクトル線のこと。希ガスやハロゲンの混合ガスを用いてレーザー光を発振させるエキシマレーザーという装置との組み合わせで、i線、KrF線などよりもさらに微細な回路の露光を実現しています。
1990年代後半には、さらに波長の短いF2レーザー(157nm)の開発をアメリカが進めましたが、2001年にニコンが「ArF液浸技術」を開発。加工するシリコンウエハを純水の中に沈めて、そこにArFレーザーを当てることで、134nm相当の描画を実現しました。これにより、ArFは「Arfドライ」と「Arf液浸」に分けられています。なお、露光装置の価格相場はArFドライが約20億円、ArF液浸が約60億円ほどとなっています。
露光装置を波長ごとに分け、2019年の出荷額および企業別シェアを調べたところ、露光装置市場におけるArF線のシェア率は、ArFドライの1位はニコンで61.7%、オランダのASMLが38.3%でこの2社で独占しています。ArF液浸のシェア率もこの2社が独占していますが、順位が逆転し、オランダのASMLが94.3%で1位、ニコンが5.7%で2位となっています。
露光装置全体でトップシェアを誇るASMLは、市場規模が大きいArF液浸にリソースを集中し、全体シェアで負けるニコンは、ArFドライに焦点を当て、シェアを伸ばしているようです。
光学ガラス、顕微鏡、カメラなど、高度な光利用技術と精密技術でさまざまな製品やソリューションを提供している、日本を代表する光学機器メーカーです。
2010年代以降は半導体露光装置事業に力を入れており、「投影レンズの解像度」「重ね合わせ精度」「スループット」の3つの技術を高いレベルで組み合わせ、精度の高い露光装置を開発・製造。グループ全体で光学部品の生産技術向上を図ると同時に、効率の良い生産体制を構築しています。
ArFでは、ArF液浸スキャナーNSR-S635E、NSR-S622Dなどのラインナップがあります。
オランダに本社を置く半導体装置メーカーです。1984年にフィリップスとASMインターナショナルとの間の合弁会社として設立。
1990年代はじめまではニコンやキヤノンとシェアを争っていましたが、露光装置の土台、ステージ、レンズ系、光源などを外部委託し、ASMLの本体設計に基づいて組み立てるプラットフォーム戦略により、優位性を発揮。現在も、半導体露光装置のトップメーカーとして、世界16ヶ国に60拠点を展開※し、世界有数の半導体メーカーを支援するリソグラフィ装置を提供しています。
※2021年8月時点、公式サイトより(https://www.asml.com/ja-jp/technology)
半導体のシリコン基板(ウエハ)などのセンサ・電⼦回路を集約する微⼩電気機械システム(MEMS)をはじめ、⾼精度の電⼦機器の製造⼯程で⽋かせない存在となっている露光装置。量産⽬的、研究開発⽬的に分けておすすめの露光装置を紹介します。