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露光装置の電力消費と省エネ対策

半導体製造に不可欠な露光装置は、極端紫外線(EUV)を用いてシリコンウエハーに微細な回路パターンを転写する、先進技術の中核です。しかしながら、これらの装置は高い性能を実現するために膨大な電力を消費しており、環境負荷や運転コストの面で大きな課題となっています。ここでは、現状の露光装置の電力消費の背景、半導体業界全体が抱えるエネルギー課題について、詳しく解説いたします。

露光装置の電力消費の現状とその背景

EUV露光装置は、波長13.5nmという極端に短い紫外線を使用して、シリコンウエハー上に微細な回路パターンを転写します。この工程を実現するために、装置内部には多数の反射ミラーや複雑な光学系が採用されており、正確なパターン転写と高解像度を保証しています。しかしながら、各ミラーで約40%ずつ光が減衰するため、最終的にウエハーに届く光は、光源出力のおよそ1%程度となってしまいます。

この光の大幅な減衰を補うため、高出力なレーザー光源が必要となり、結果として装置全体の消費電力は約1メガワットに達します。たとえば、台湾の半導体受託生産大手TSMCでは、新しい世代の露光装置を多数導入しており、その電力消費量は台湾全体のエネルギー供給にも大きな影響を与えるほどです。電力需要の急増は、環境対策や送電インフラの充実、再生可能エネルギーの導入など、さまざまな社会的課題とも連動しているため、露光装置の省エネルギー化が喫緊のテーマとなっております。

半導体業界におけるエネルギー課題

半導体産業は、最新技術の微細加工により高性能なデバイスを供給する一方、装置自体の複雑な機構と高出力の光源によって大量の電力を必要とします。具体的には、TSMCは2020年時点で台湾全体の電力の約6%を消費していましたが、将来的にはその割合が12.5%にまで拡大する見込みです。
この状況は以下の点で問題となります。

省エネルギー技術の取り組み

露光装置の消費電力削減に向けた取り組みは、業界全体で進められており、その中でも特に注目されるのが、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の新竹積教授による革新的な技術です。

新竹教授の技術革新

従来の露光装置では、光源からウエハーまでの経路に10枚以上のミラーを使用し、複雑な光学設計が求められていました。しかし新竹教授は、光学系の収差補正理論を徹底的に見直し、プロジェクター光学系を2枚または4枚のミラーで構成するシンプルな設計を提案しました。
この新技術の主なメリットは以下の通りです。

さらに、この省エネ技術は、発電設備や送電網の整備によるエネルギーインフラの拡充と相まって、半導体業界全体の環境負荷低減や経済的負担の軽減に寄与することが期待されます。

省電力な露光装置を選ぶべき理由

現在、半導体製造における露光装置は、技術革新とともに進化しているものの、依然として高い電力消費と環境負荷が問題となっています。ここで注目したいのは、以下のポイントです。

以上の理由から、半導体製造を行う企業は、今後の投資や装置選定において、省電力で環境に配慮した露光装置を選ぶことが極めて重要であると考えられます。省エネルギー技術を搭載した装置は、将来的なエネルギーコストの削減だけでなく、環境面や社会全体の持続可能性に大きく貢献するでしょう。

まとめ

半導体製造プロセスの根幹を成す露光装置は、その卓越した精度により最先端チップ製造を可能にしていますが、高い消費電力と環境負荷が大きな課題です。現状、TSMCなど大手企業が導入している露光装置は、巨大な電力需要により国全体のエネルギーシステムに影響を及ぼす可能性があります。
一方、新竹教授の提案する省エネルギー技術は、ミラー構成の簡素化により反射損失を大幅に低減し、装置全体の電力消費を劇的に削減できる可能性を秘めています。これにより、環境保全、運転コストの削減、そして送電網の負担軽減といった課題に対する大きな一歩となるでしょう。

最終的には、半導体製造に携わる企業やエンドユーザーの皆様は、これからの投資判断や技術選定において、省電力な露光装置を積極的に選びましょう。その選択こそが、環境に優しく、持続可能な未来へとつながる大切な一手となるのです。