高NA EUV露光装置は、13.5nmの極端紫外線光を用いた露光手法により、レンズの開口数(NA)を従来の0.33から0.55に拡大した露光装置のことです。
2022年6月にハワイで開催された「2022 IEEE Symposium on VLSI Technology&Circuits(VLSIシンポジウム)」にて、露光装置の大手メーカーであるASMLが2nmプロセス以下の微細化を可能にするEUV露光装置の開発ロードマップの最新版を公開しました。
開発ロードマップによると、現在開発中の高NA EUV露光装置(試作用)の商用1号機を2023年末までに出荷し、2025年に量産機の出荷開始を予定しているとのこと。この出荷計画が実現すれば、顧客は2025年頃から従来型のEUV露光装置によるマルチパターニングから高NA EUV露光装置によるシングルパターニングへの以降が可能に。それにより、プロセスコストの低減を図りながらスループットの向上を図ることができるようになります。
想定される5大顧客(Intel、TSMC、Samsung Electronics、SK hynix、Micron Technology)については、ASMLの本社内にある「imec-ASML High NA Lab」において早期に高NA EUV露光装置にアクセスできるようにするとのこと。imec-ASML High NA Labでの高NA EUV露光装置の稼働には、コーターデベロッパ(クリーントラック)を供給する東京エレクトロンやLam Research、KLA、HMI、JSRも協力しています。
ASMLとベルギーの独立系先端半導体研究機関imecは、2023年6月28日にベルギーのimecキャンパスにおける最先端の高NA EUVリソグラフィパイロットライン設置などに関する覚書を締結したと発表。締結された覚書によると、imecの300mmパイロットラインに対し、ASMLが最先端のEUV/DUVリソグラフィ装置および計測機器一式を設置したうえでフルサービスを提供する内容になっています。
両社によれば、今回の覚書は高NA EUVに関するASMLとimecの協力関係を次のステップに進めることを意味しているとのこと。ASMLとimecの共同研究の第1段階はASMLの高NA EUV露光装置の試作機を用いる形で進められており、最先端半導体チップメーカーおよび材料・装置のエコシステムパートナーと協力しながら、できる限り迅速な大量生産の採用に向けて高NA EUV露光技術の準備を目指したものです。
第2段階となる覚書では、ASMLの高NA EUV露光装置の量産機が用いられる予定です。
Intelは米国時間の2023年10月23日に、オレゴン州にある半導体研究開発施設への新たな設備投資計画があると発表し、高NA EUV露光装置を2023年内に導入することを明らかにしています。そのほかにも、次世代のプロセス開発に必要な製造装置などが導入される予定です。
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