韓国政府は韓国経済の基盤構築を進める施策の一環として、韓国の半導体産業の強化や関連分野への取り組みを進めており、また実際に韓国の半導体輸出も規模を増加していることからも、今後の韓国経済を考える上で半導体を無視することはできないでしょう。
韓国の政府系シンクタンクである「韓国開発研究院(KDI)」が2024年4月7日発表した「(韓国の)4月の経済動向」によれば、内需回復こそ停滞しているものの、輸出分野でIT産業を中心とした成長が急増しており、景気不振は緩和されていくという見込みになっています。
加えて、輸出についての評価は前月の「半導体好調により回復の流れ継続」から、「世界半導体市場の持ち直しにより大きく増加」へとさらに期待感のある表現となっており、前年と比較しても輸出規模が3%以上も増加しているなど良好な流れが維持されていることは重要です。
また半導体景気の改善による好影響は設備投資にも及んでおり、半導体投資と関連性のある特殊産業用機械については2024年に入ってから投資指数が高い増加率を示しており、金融市場においても半導体景気に対する肯定的な評価が広がっていると予想されます。
国内の商品消費などについては冷え込みが続き、サービス消費の増加率も勢いを弱めているものの、だからこそ韓国経済では半導体産業を中心とした輸出産業などに期待があつまっているともいえるでしょう。
そもそも半導体市場は2015年以降、世界的に市場規模が増加傾向にあり、新型コロナウイルス感染症のパンデミックによって2022年半ば頃に半導体需要へブレーキがかかりこそしたものの、改めて2023年後半から再び再び緩やかな業績回復が傾向として発生しています。
また、それに伴って世界各国では半導体製造工場に対する設備投資が活発化しており、さらにアメリカの調査会社「ガートナー」が調べた2022年の世界半導体売上高ランキングにおいて、第1位と3位に韓国の企業がランクインしていることも見逃せません。
韓国経済において半導体が重要なウェイトを占めていることは明確な事実であり、特に2022年の韓国の輸出総額は前年比6.1%増で、6,836億ドルという過去最高額を達成していましたが、その内1,292億ドル(19%)は半導体の輸出額となっていました。
つまり、韓国の輸出事業の5分の1は半導体産業へ依存しているということが分かります。
なお、韓国によって半導体の輸出先としてメインになる相手国は中国が主であり、半導体輸出全体でおよそ40%(521億ドル)が対中輸出であったことも重要です。一方、韓国企業にとって半導体産業における対中戦略は重要な経済テーマですが、アメリカと中国の対立に根ざした対中半導体輸出規制などが韓国の経済活動や半導体産業へ少なくない影響を及ぼしている事実も無視できません。
韓国の前大統領であった文在寅(ムン・ジェイン)政権時代では、2019年8月に「対外依存型産業構造脱皮のための素材・部品・装備競争力強化対策-素材・部品・装備供給安定および自立化対策-」を発表して、半導体を含めた電子産業への集中的な取り組みを加速させました。また2020年7月に同対策を保管する戦略を発表し、さらに2021年5月には「K-半導体戦略」を掲げるなど半導体サプライチェーンの基盤構築を目指しています。
その後、2022年3月の大統領選挙によって新しく尹錫悦政権が発足し、改めて韓国における半導体政策を色々と発表しています。
特に尹政権における半導体関連政策の目玉として掲げられているのが、以下の2つです。
前者は2022年7月に産業通称資源部から発表されたものであり、国家戦略として半導体産業の成長支援を掲げています。具体的には5年間で340兆ウォン以上の大規模投資や、10年間で15万人以上の専門人材の育成、先端技術の開発などがまとめられており、国家規模の設備投資や人材育成を進めていくという宣言です。
また同月には教育部も「半導体関連人材育成方案」を発表しており、2026年までに100万人のデジタル人材を育成し、さらに半導体専門人材を15万人育成するといった目標を掲げ、優秀な大学や大学院には「半導体特化大学」として財政支援を行うことも明言されています。
サムスン電子とSKハイニックスが半導体の国際マーケットで韓国の存在価値を大きく示しているものの、両社は中国に大規模工場を建設しており、中国産業への依存度が高くなっていることは無視できません。事実、米中対立による輸出管理や規制の影響は韓国の半導体企業にも及んでおり、今後に中国の半導体産業が成長して国産化が進めば、韓国の半導体産業にとって脅威になり得ることは重要です。
チャイナリスクや中国の成長を見据えて韓国はアメリカや諸外国との連携強化にも取り組んでおり、脱中国依存と国際人材の育成によって、将来的にも安定した半導体産業を獲得することを目指しています。
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