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日本の半導体関税の動向

近年、米国を中心とした関税政策の強化が世界経済に新たな緊張をもたらしています。特に「産業の血液」と称される半導体分野では、米政府が追加関税や相互関税を繰り出し、サプライチェーンの混乱とコスト上昇を招く懸念が高まっています。本稿では、①経済研究所の試算、②トランプ政権の相互関税発表、③日米二国間交渉の動き――の3つの視点から、半導体関税の最新動向をわかりやすく解説します。

1. 米国による「25%追加関税」検討の試算

経済研究所の分析では、半導体を含む電子機器に25%の追加関税が課された場合、日本の実質GDPは最大0.05%(約3,000億円相当)、世界全体でも0.06%押し下げられると試算されています。特に中国では0.20%、ASEAN諸国では0.24%と、アジア地域への影響が相対的に大きく、半導体供給網の混乱による波及ダメージが示唆されました。

さらに、医薬品や銅、木材などを含めた広範な品目に25%の追加関税を課した場合、日本のGDP押し下げ幅は0.07%、世界全体では0.12%に拡大。自動車部品への追加関税(日本:0.36%、世界:0.10%)には及ばないものの、半導体の戦略的重要性を考えれば、長期的な技術開発や産業競争力に深刻な影響を与えかねません。

2. 「相互関税」導入で高まるテック業界の不安

2025年4月2日、トランプ大統領は「相互関税」政策を正式に発表。4月5日から一律10%、4月9日からは相手国ごとに設定された上乗せ税率を適用すると宣言しました。発表資料では、中国34%、台湾32%、日本24%など、各国が米国製品に課す実質関税率(非関税障壁を含む)をベースに、その半分を相互関税として課す形です。

テック業界からは、半導体価格の急騰によってAI(人工知能)やデータセンター向けインフラ投資が鈍化し、結果として米国内外のAI研究開発が後退するとの懸念が噴出。ハイエンドGPUの価格転嫁が進むことで、新興企業の参入障壁が一段と高くなる恐れがあります。

3. 日米交渉:日本の「購入カード」と補助金戦略

こうした米国の強硬策に対し、日本政府は日米二国間交渉でカウンターを模索しています。朝日新聞の報道によると、日本側は米半導体大手(例:NVIDIA)の製品を数十億ドル規模で購入する案を米側に提示。日本国内の通信会社やIT企業向けに補助金を支給し、輸入拡大を後押しすることで、米国の対日貿易赤字(約10兆円)の削減カードとして活用しようとしています。

また、半導体製造に欠かせないウェハーや化学薬品の米国内製造支援策も併せて提案。これにより、日米で強固なサプライチェーンを構築し、経済安全保障の観点からも相互依存を深める狙いがあります。第4ラウンド交渉は5月末に東京で開催予定です。

4. 企業と政府に求められる対応策

まとめ

半導体関税の強化は、単なる価格上昇にとどまらず、グローバルな研究開発や産業競争力の中長期的な停滞リスクをはらんでいます。一方で、関税カードの行使は各国に「譲歩と対抗策」の連鎖を引き起こしやすく、貿易摩擦の先鋭化を招きかねません。今後は、政府の補助金・交渉戦略と企業のサプライチェーン多様化・技術投資が鍵を握るでしょう。動向を注視しつつ、国内外の協調と攻めの投資で不確実性に備えることが求められます。