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リンテックがEUV露光用CNTペリクルの実用化に前進

透過率90%を維持しながら、耐久性を最大66倍へ

リンテックは、極端紫外線(EUV)露光装置向けのカーボンナノチューブ(CNT)ペリクルについて、光透過率と耐久性の両立に向けた新技術を開発しました。産業技術総合研究所(産総研)先端半導体研究センターとの共同研究により、約90%の高い光透過率を維持しながら、CNTペリクルの耐久性を大幅に向上させることに成功したとしています。

ペリクルは、半導体回路の原版であるフォトマスク(レチクル)を異物から守る薄い保護膜です。EUV露光では、光源出力の向上に伴ってペリクルが高温環境にさらされるため、光を通しやすいだけでなく、熱や水素プラズマに耐える性能が重要になります。

CNTペリクルの課題:耐久性を上げると透過率が下がる

次世代EUVペリクルの有力候補とされるCNTペリクルですが、実用化に向けた最大の課題は「耐久性と光透過率のトレードオフ」でした。EUV露光装置内では、水素プラズマによってCNTペリクルがエッチングされ、劣化しやすくなります。

劣化を防ぐために金属薄膜などでコーティングする方法はありますが、コーティングを厚くすればするほどEUV光の透過率が下がるという問題があります。リンテックは今回、無機コーティング材料と新たな処方を確立し、CNTの表面を均一に保護することで、このトレードオフの解消に近づいたとしています。

低中出力EUV向けでは耐久性10倍以上、高出力向けでは「Dual-density」構造を開発

現行の低中出力EUV露光装置向けには、キャッピングを施したCNTペリクルを開発しました。リンテックは、自社で設計した水素プラズマエッチング装置を用いて評価を行い、ペリクル表面温度が300~400℃となる環境で、キャッピングなしのCNTペリクルと比べて10倍以上の耐久性を確認したとしています。

さらに、600W以上の高出力EUV露光装置を見据え、ペリクル外周部のCNTに厚みを持たせる「Dual-density」構造も開発しました。高温領域ではレーザー照射部のエッチングが抑制される一方、外周部では劣化が進みやすいことから、周辺部のCNT密度や厚みを高めることで耐久性を向上させる狙いです。

条件によって耐久性は24倍、38倍、最大66倍に

リンテックの評価では、比較対象を「キャッピングなし+Single-density」のCNTペリクルとした場合、室温ではキャッピングあり+Single-densityで耐久性が24倍、表面温度400℃では38倍に向上しました。さらに、表面温度965℃の条件では、キャッピングあり+Dual-densityの構造で耐久性が66倍に達したとしています。

Dual-densityを適用する領域は、顧客のEUV露光プロセスや装置条件によって変わるため、リンテックはキャッピングとDual-densityを柔軟に組み合わせ、次世代EUV露光技術を見据えたソリューションとして提案していく方針です。

2026年内に国内で量産開始へ、前工程分野への展開を強化

リンテックは、産総研つくばセンター中央事業所内に「つくばイノベーティブクリエーションセンター」を設け、CNTペリクルの量産設備や評価機器を導入しています。2026年内を目標に、「EUVペリクルプロダクト」の本格生産開始に向けた取り組みを進める計画です。

同社はこれまで、半導体後工程向けの特殊粘着テープや装置、電子部品向けフィルムなどに強みを持ってきました。CNTペリクルの量産体制を確立できれば、EUV露光という半導体前工程の重要領域へ事業を広げる動きとして注目されます。

EUV露光の進化は、周辺材料の性能競争も左右する

今回の技術開発は、EUV露光装置そのものだけでなく、その性能を支える周辺材料の重要性を示すものです。光源出力が高まるほど、ペリクルには高い透過率、耐熱性、水素プラズマ耐性、異物管理といった複数の性能が同時に求められます。

微細化が進む先端半導体では、マスク上の異物を防ぎながら露光効率を落とさないペリクルの性能が、歩留まりや生産性に直結します。リンテックがCNTペリクルの量産適用に向けたハードルをどこまで下げられるかが、今後のEUV露光技術の進展を支えるポイントになりそうです。

参照元: EE Times Japan「EUV露光機用CNTペリクルのトレードオフに突破口、透過率維持しつつ耐久性は最大66倍へ」2026年5月26日(https://eetimes.itmedia.co.jp/ee/articles/2605/13/news004.html)