露光装置は、露光方式によってコンタクト露光装置・プロキシミティ露光装置、一括投影露光装置および分割投影露光装置に分けられます。ここでは、プロキシミティ露光装置について、歴史やメリット・デメリットをご紹介します。
プロキシミティ露光は、マスクとウエハの間に10µm〜100µm程度の隙間(すき間)を設けた状態で露光する方式です。
マスクとウエハが直接接触しないため、コンタクト露光で発生しがちなマスクやウエハ表面の傷や汚染を抑えることができます。ただし、隙間が存在するため、露光時にはフレネル回折(Fresnel diffraction)の影響を受け、パターンのエッジ部分がぼやける傾向にあります。このため、隙間の均一性が非常に重要となり、均一な隙間が維持されないと解像度が低下し、パターンの再現性にばらつきが生じます。
1970年代、コンタクト露光でマスクにゴミやキズが付着する問題を解決するために、プロキシミティ露光方式が開発されました。
1977年、キヤノンが等倍率投影とマスク自動位置合わせ機能付きのプロキシミティ露光装置「PLA-500FA」を発表し、翌年の1978年に販売が開始されると急速に普及しました。
同年、レーザースキャンを用いたオートアライメント機構を搭載したPLA-501FAが登場。これにより、作業者の熟練度に依存しない高精度な位置合わせが実現し、歩留まりや生産性が大幅に向上しました。
プロキシミティ露光は、コンタクト露光と比べて装置コストやランニングコストを抑えられるという点で、特定のプロセスや中低解像度が許容される用途で長らく利用されてきました。近年は、より高い解像度が求められる先端プロセスには投影露光が主流となっていますが、プロキシミティ方式は研究開発や特定の大量生産分野、例えばプリント基板(PCB)や特殊用途の露光工程などで今なお採用されるケースがあります。
マスクとワークを完全に接触させるコンタクト露光方式の欠点を解消するため開発されただけあって、プロキシミティ露光はマスクもウエハもダメージが少ない点がメリットです。ウエハとマスクが接触することで汚れや傷が付着したり、転写欠陥が発生するのを防ぐことができます。
一方で、大面積への露光では特に、マスクとウエハとの間隙を均一に一定に保つことが難しく、このため、マスクとウエハが部分的に接触して転写欠陥となったり、マスクやウエハに傷が発生する可能性があります。また、マスクとウエハとのすき間を空けるため、解像度が下がってしまう点もデメリットです。特に段差があるワークなどへの露光は難しいでしょう。
プロキシミティ露光は、マスクとウエハのすき間をあけて露光するため、マスクやウエハへのダメージが少なく、半永久的に使える点がメリットです。一方で、すき間があるため、コンタクト露光に比べて解像力が下がります。大経口や段差のあるウエハは均一に露光しにくい点がデメリットでしょう。
プロキシミティ露光は、導入費用やランニングコストを抑えたいという方におすすめです。