ブイ・テクノロジーは、半導体製造に必要なフォトマスクの検査装置を手掛けてきた企業です。ファブレス経営による外部委託体制でしたが方針転換しました。同社では初の試みとなる自社の生産拠点を設けたのです。杉本重人社長によると「自前の工場を設けることで、製造過程でのムダを省けるためコストメリットは大きい」という点で期待しているようです。
なぜ半導体製造装置メーカーが増産投資をはじめたのか?その理由は電気自動車の普及があるようです。半導体は多種多様な製品で使われています。電気自動車もそうですし、パソコン、サーバ、スマホでもなくてはならない部品です。
短期的に見ると、スマホやパソコンの出荷が減少していることは、半導体に関わる企業に暗い影を落とします。しかしパソコン以外での半導体需要を見ると話は別のようです。
半導体業界の国際団体SEMIによると、半導体の回路形成前に必要な前工程装置への投資額は2023年にマイナス成長に転じると予測しています。スマホやパソコンの出荷が減ったことで、半導体の世界出荷額も8月と9月でマイナス成長という結果です。
ただ、あくまでスマホやパソコンは従来の需要であり、中長期的に見ると新しい分野での半導体需要が生まれています。電気自動車、高速通信規格5G、ロボット向け用途です。新分野の需要は右肩上がりを続け、経済産業省も、世界の半導体市場でロボット用途が拡大するという見通しをしています。20年~30年の10年間で倍増というレベルです。その流れの中で日本の半導体製造装置の市場規模も倍増すると予想されています。その額は4兆円以上という内容です。
国内外で半導体に関する投資が活発化しています。パソコンやスマホ以外の装置を含めた半導体需要を見込んだチャレンジです。アメリカでは「CHIPS・科学法」が2022年8月に成立し、5年程度で半導体工場の誘致に390億ドルの投資を予定しています。
2024年には半導体受託製造の世界最大手台湾のTSMCが熊本県菊陽町で工場の稼働を予定。その流れで熊本県内に半導体関連工場の新増設計画が14件ありました。半数が製造装置関連です。キャノンは露光装置を製造していますが、栃木県宇都宮市に新工場を建設して生産力を倍増します。
半導体はパソコンやスマホだけに使われているわけではありません。2023年以降、他分野での半導体需要が拡大したとすれば、設備投資にチャレンジできなかった企業は淘汰される可能性があるという識者の指摘もあります。半導体装置メーカーの競争力が高まることは日本経済にもよい影響が期待できるでしょう。
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