貴ガスとは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンからなるガスを指します。現在の英語表記は「noble gas」ですが、2005年までは「rare gas」と言われていたことから「レアガス」と呼ばれる場合もあります。
貴ガスは、半導体の製造工程で重要な役割を担っています。
地球大気の0.0005 %を占める天然ガスです。鉱物やミネラルウォーターにも含まれており、アメリカとカタールが生産量を占めています。
放電によって発光する、空気中にも含まれている貴ガスです。空気分離装置(ASU)で製造されるのが一般的で、半導体の「ネオン管」に封入するために利用されます。
貴ガスの中で、空気中に含まれる量がもっとも多いのがアルゴンです。空気から液体の酸素と窒素を分離精製するときに得られます。製鋼や溶接、シリコンの製造などによく用いられます。
放電によって青白い光を出すことから、写真のフラッシュにも利用されるクリプトン。半導体製造の現場では、リソグラフィやエッチングに利用されます。
レーザー光を発生させるエキシマレーザー装置で使われる貴ガスです。自然光に近い光を発することから、写真のフラッシュや灯台のランプなどにも利用されます。
貴ガスは、半導体集積回路のパターン加工で使う「エキシマレーザー」を出すためのガスとして利用されます。エキシマレーザーで利用されるのは、ネオンやアルゴン、クリプトンといった貴ガスです。
また、半導体の材料である超高純度シリコン単結晶を製造・製鋼する場合、高温高圧下でアルゴンが用いられます。他にも各貴ガスは、その性質に応じてさまざまな面で半導体製造に関わっています。
もともと貴ガスは、現在も戦争状態が続いているロシアやウクライナに製造拠点が多くありました。1980年代、旧ソビエト連邦は貴ガスを宇宙事業や兵器開発のために利用しようと、戦略的な資源にしていたからです。
日本や他の国でも貴ガスの分離や精製は行われてはいますが、生産量は少ないのが現状。大量の貴ガスを供給できる大規模な製造拠点は世界的にも少なく、各国がロシアやウクライナからの輸入に依存していました。
戦争によって半導体不足が問題となっているのは、ロシアやウクライナからの貴ガスの供給不足から来るものなのです。
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