キヤノンが半導体露光装置の新型機開発について発表しました。複数チップを積み重ねて性能を向上させる3次元(3D)技術向けのもので、後工程で使う露光装置です。従来機と比較して、カバーできる露光面積が4倍以上に広がります。人工知能を使った大型先端半導体の生産についても対応でき期待が高まっているようです。
従来の露光装置は回路を細くして集積度を高める微細化の方向に進んでいましたが限界説も囁かれはじめていました。今回キヤノンが開発した半導体露光装置は微細化ではなく、3次元技術によるアプローチです。3次元技術開発にキヤノンが成功したことは、国内外の半導体業界にとって大きな意味を持ちます。
対応機種が増えれば必然的にキヤノンの成長が見込めるでしょう。同時に、半導体業界にまた新しい選択肢が増えることになります。日本の半導体産業にとっても光となるものです。
FPA-5520iV LF2オプションが新型機です。工学系部品の見直し、照明光を均一化できるホモジナイザーの改良で、露光面積の拡大に成功しました。チップを載せる部分の部品にはチップ同士を電気的に接続することを目的とした配線が、何層も形成されています。その細かく高密度の配線を形成するためにFOWLP技術が必要です。
FOWLPはシリコンウエハーから切り出し、半導体チップを再度配列してウエハー形状に固め、再構成基盤に配線をパターニングする流れですが、量産時に問題がありました。変形度合いの大きな基盤の搬送、パターニングのための基盤ステージ上では基盤平坦度を確保しなければなりません。
チップ配列のばらつきについても量産を考える上で問題があります。その課題をFPA-5520iV LF2オプションなら解決が期待できるのです。
キヤノンが改善した点は複数あります。基盤の反り形状に合わせて吸着面が変形するフレキシブルパッドで、基盤搬送システムを新しく開発しました。基盤ステージの問題は、キヤノン独自の吸着システム新規開発で解決。従来機種と比べると、約2倍の広視野アライメントスコープを搭載することで装置稼働率の向上と高い生産性が実現します。FPA-5520iV LF2オプションは従来機種と比較し、歪曲収差1/4以下まで改善。照度均一性を高めた照明光学系でつなぎ露光100×100mmの超広角を実現しています。
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