そもそも「半導体」とは、電気を通しやすい「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の、両方の性質を兼ね備えている中間的な物質を指します。より正確には、両方の性質を同時に発揮できるというよりも、用途に応じてどちらの性質としても活用できるという点が特徴です。
言い換えれば、半導体を効果的に利用することで、任意の回路に電気を流したり、特定の条件下で電気を流さなかったりという制御を行えるようになります。
半導体は様々な家電や電子機器の開発に欠かせない部品となっています。
半導体の製造には色々な素材や原料が用いられますが、一般的に半導体製造のマテリアルとしてイメージされやすいものが「シリコン」です。
シリコンは元素記号「Si」で表記される物質であり、単体原子によって物質として構成されることが特徴です。シリコンと半導体開発や製造との歴史は深く、シリコンは地球表面上にある資源として2番目の埋蔵量を誇っており、加工性にも優れていることから半導体の材料として広く活用されています。
シリコンの他にも半導体の製造には「ゲルマニウム」や「セレン」、そして「カーボン」といった素材が使われており、それぞれの半導体メーカーや目的ごとに工夫されていることがポイントです。
半導体には複数の種類が存在しています。
LSI(大規模集積回路:Large Scale Integration)は文字通り集積度を高めて機能性や制御機能を向上させられている半導体の総称です。なお、LSIを含めてIC(集積回路)としてひとまとめにされることもあります。
ダイオードやトランジスタ、受動素子といった複数の素子をまとめて集積させて構成されている半導体であり、複雑かつ多様な機能を再現することが可能です。デジタルカメラやスマートフォン、パソコンなど高性能な現代機器を開発するのに重要な部品となっており、高性能なLSIを開発・製造できるメーカーは世界的にも注目を集めます。なお、より大規模のLSI(超多機能LSI)について「システムLSI」と区別されることもある点が特徴です。
ICチップなどの呼び方で知られる「IC(集積回路:Integrated Circuit)」は、文字通り複数の素子を1つの部品として集積されているものを指しています。複数のトランジスタを組み合わせて単一の構成を構築したり、トランジスタとダイオードを複合的に組み合わせて1つの機能を獲得したりした部品がICです。
なお、ICは集積度に応じて「SSI(Small Scale Integration)」や「MSI(Middle Scale Integration)」、「LSI(Large Scale Integration)」といった分類がされており、目的とする製品のレベルや機能によって使い分けられています。
ディスクリート半導体は単一機能を有する素子であり、半導体の種類の中で集積度が低いタイプとしてカテゴライズされている部品です。ダイオードやトランジスタといった部品がディスクリート半導体として代表的なものであり、電気の流れる方向を制御したり電流の大きさを制限したりする目的で利用されています。
とても身近で一般的な半導体であり、パソコンやスマートタブレット、スマートフォンなど幅広い製品でディスクリート半導体は使われています。
半導体の重要な役割の1つが「エネルギーの変換」であり、具体的には「電気エネルギーを光エネルギーに変換する」という役割が重要です。例えば発光ダイオードを用いたLEDライトやレーザーといった電化製品は、電流を光に変換して様々な用途に使えることがポイントです。
電気エネルギーの規模によって光の強さも変わります。
半導体の特徴として、光を電気へ変換できることも見逃せません。例えば、太陽光発電パネルには半導体が採用されており、太陽光を集めて電気エネルギーとして変換(発電)します。なお、変換できる光の種類は可視光だけでなく近赤外線など複数の光となっている点も重要です。
半導体の役割として大きなものに、「電流の方向を制御する」というものも挙げられます。
電気の流れる向きをコントロールすることにより、電化製品のオン・オフを切り替えたり、必要な部分にだけ必要なタイミングで電気を流したりといったことが可能になります。
電気のオン・オフの切り替えではトランジスタやインバーター、電流制御ではダイオードやコンバーターといった部品が代表です。
半導体は現代の様々な家電や電気製品に利用されており、高機能化の進む家電業界において半導体は不可欠なものとなっています。
半導体が利用されている身近な家電には、洗濯機や冷蔵庫、炊飯器、エアコンといった製品の他にも、スマートフォンやスマートタブレット、パソコンなどいくつものものが存在しています。
半導体による制御機能がなければ、リモコンでエアコンの温度を調節したり、お米の量に応じて炊飯器が自動的に温度をコントロールしたりといったこともできません。
社会においても色々な場所や製品で半導体が利用されています。公共施設で使われている券売機や大型モニター、身近なものでいえば冷温飲料を同時に取り扱っている自動販売機など色々なものが活用されています。
また、航空宇宙分野や公共交通機関、インフラ環境のコントロールなどにおいては高性能な半導体の実現が不可欠であり、より複雑な機能や性能を獲得するためには超高性能LSIといった製品の開発が重要です。
その他、人工知能(AI)分野でも半導体は積極的に利用されています。
半導体は電子機器分野において欠かすことのできない部品であり要素です。そのため日本を始めとして世界各国で半導体の開発や製造が研究されており、日本国内にも独自の半導体技術を獲得しているメーカーが複数存在しています。
なお、DX化やXR化といったプロジェクトが世界中で進められており、今後もますます半導体や関連備品に対するニーズの増大が見込まれていることも重要です。
言い換えれば、新型コロナウイルスの感染拡大のように国際情勢の影響などによって半導体の供給が不足すると、幅広い業界で製品開発が停止してしまうといったリスクもあります。
ベル研究所(アメリカ)のバーディーンやブラッテンによって、1947年に点接触型トランジスタが開発されました。また翌年には接合型トランジスタが開発されています。
当時は真空管が半導体として計算機やラジオの部品に利用されていましたが、消費電力が大きくて物理的にも大サイズであり、製品開発に困難が生じていたことがポイントです。
なお、1959年にはアメリカのテキサス・インスツルメンツ社やフェアチャイルド社がIC(集積回路)を開発し、製品の小型化や軽量化が加速しました。
日本の半導体の歴史を振り返ると、東芝によってフラッシュメモリが1980年代に開発されました。その後、2000年代になればデジタルカメラやスマートフォン、パソコンのUSBメモリとして半導体が利用されるようになり、大規模なICの実現や多機能化が様々な製品開発を下支えしてきました。
半導体は最初に設計段階を経た後、前工程と後工程の2段階に製造工程が大きく分類されています。
半導体製造における前工程は、シリコンで作成した専用の基板(ウエハ)へ電子回路を構成していく過程です。同じ回路を持つ半導体が数十~数百個も格子状に配置されており、そのサイズや規模によって半導体としての性能も分かれていきます。
具体的な流れとしては、ウエハ表面の酸化によって絶縁膜を形成した上で、配線形成のための金属薄膜を作ります。薄膜へ設計にもとづいて配線パターニングを行い、最後に電極用金属を埋め込んで導通検査を行うまでが前工程の流れです。
半導体製造分野における後工程は、前工程によって作られたシリコンウエハ上の電子回路を機械的にカットして、製品の検査を行う段階です。組立や出荷の前に行わなければならない最終試験であり、後工程を適正化することで半導体の品質を維持します。
具体的な流れとしては、ダイシングソーというカッターで回路を切断し、採取したチップにリードフレームやワイヤーを接続させます。その上で、電気特性検査や外観検査といった工程へ進むといった流れです。
半導体の製造工程の1つとして「露光」という段階があります。露光はシリコンウエハの上に電子回路パターンを転写する工程であり、あらかじめガラス板に描いておいたフォトマスクを、高性能レンズで縮小させながら、感光性皮膜(フォトレジスト)を塗布しておいたウエハ上に紫外線で投影してパターンを転写するという仕組みです。
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