プリント基板(PCB)の配線幅や層数が製品性能を左右するようになり、露光工程は基板メーカーの実力差が最も表れる工程になっています。
半導体ウェーハの露光と比べると、プリント基板の露光は「大面積を扱う」「基板が伸縮し、反りやうねりがある」という前提条件が大きく異なります。そのため、必要とされる装置の性能も、半導体前工程のステッパーとは別の方向に発展してきました。
本記事では、プリント基板の製造フローにおける露光工程の位置づけ、使い分けられる露光方式、そしてDI(ダイレクトイメージング)露光が普及した理由を整理します。半導体側の工程については半導体露光の工程を知ろうで解説しています。
プリント基板の配線(導体パターン)は、銅箔を張った基材の上にレジストでパターンを作り、めっきやエッチングで銅を残す・除去することで形成されます。露光は、そのパターンを決める工程です。
セミアディティブ工法を例にすると、パターニング工程は次の流れで進みます。
| 工程 | 内容 | 露光との関係 |
|---|---|---|
| 1. レジスト塗布(ラミネート) | 感光性のドライフィルムレジスト(DFR)を基板に貼り付ける | 膜厚が解像力と焦点条件を左右する |
| 2. 露光 | 回路パターンデータに基づき紫外光を照射し、レジストを感光させる | 線幅と重ね合わせ精度がここで決まる |
| 3. 現像 | 未露光部(ネガ型の場合)のレジストを溶剤で除去する | 露光量不足はパターン欠損につながる |
| 4. 銅めっき | シード層を下地に銅を析出させ、配線を形成する | レジスト形状が配線断面を決める |
| 5. レジスト剥離 | 役目を終えたレジストを化学的に除去する | ― |
| 6. フラッシュエッチング | 不要なシード層を除去し、配線形状を整える | 露光時の線幅設計に織り込む必要がある |
この流れの中で、露光工程の出来がその後のすべての工程の上限を決めます。露光でパターンが崩れていれば、めっきやエッチングの条件をいくら追い込んでも品質は回復しません。エッチングの原理はエッチングについて、レジストの選び方はフォトレジストについてで解説しています。
プリント基板の製造では、露光を2回以上行います。目的が異なるため、求められる性能も変わります。
配線そのものを形成する露光です。ドライフィルムレジストを使い、微細な線幅とスペース(L/S)を安定して出すことが目的になります。ここでは解像力と、層間の重ね合わせ精度が最重要になります。
光源としては、解像力を確保しやすいi線(365nm)やih線が使われてきました。露光波長ごとの特性は露光波長とは?で整理しています。
はんだ付けする部分だけを開口し、それ以外を絶縁・保護する層の露光です。厚膜を扱うため高い照度が求められ、スループットを確保する観点からih線やihg線のように複数の輝線を使う構成が選ばれます。
SR層では線幅よりも開口径の精度と、下層のパッドに対する位置合わせ精度が問題になります。詳しくはソルダーレジストとはをご覧ください。
プリント基板の露光装置は、マスクの使い方と光学系の構成で分類できます。
| 方式 | 解像力 | 焦点深度 | 露光面積 | 基板の伸縮への対応 |
|---|---|---|---|---|
| コンタクト露光 | 高い | ―(密着のため) | 大面積 | 対応できない |
| プロキシミティ露光 | 中程度 | ギャップに依存 | 大面積 | 対応できない |
| 投影露光(1:1) | 中〜高 | 深い | ショット単位 | 分割露光+スケーリングで対応 |
| DI(ダイレクトイメージング) | 高い | 方式により異なる | スキャンで拡張 | 基板ごとの補正が可能 |
コンタクト露光やプロキシミティ露光は装置構成が単純で導入コストを抑えやすい一方、フォトマスクとワークを1対1で合わせるため、基板が伸縮すると重ね合わせを合わせ込めません。各方式の詳細はコンタクト露光、プロキシミティ露光、投影露光で解説しています。
1:1の投影露光は、プリント基板露光において2つの強みを持ちます。
ひとつは焦点深度が深いことです。プリント基板には反りやうねり、段差があるため、ピント位置が上下しても線幅が変わらない余裕が必要になります。ウシオ電機が公開している評価例では、25µm厚のDFRに対して焦点位置を±200µm振っても17.5µmL/Sのレジスト形状に変化がなく、±50µmの範囲では線幅ばらつきが約±1µm以内に収まったとされています。焦点深度の考え方は焦点深度(DOF)とは?で詳しく解説しています。
もうひとつは、基板の伸縮に対応できることです。基板を分割してショットごとに露光し、アライメントマークを読んで倍率(スケール)を補正すれば、伸び縮みした基板でも各ショットで位置を合わせ込めます。重ね合わせ精度が±10µmを下回る領域では、一括コンタクト露光では歩留まりを維持できず、ステッパー方式の領域になるとされています。
DI露光は、フォトマスクを使わず、回路パターンデータからレーザーやDMD(デジタルミラーデバイス)で直接レジストに描画する方式です。マスクレス露光装置とも呼ばれます。
マスクが不要になることで、次のような効果が得られます。
とくに最後の点は、多層基板やパッケージ基板で効きます。1枚ごとにアライメントマークを読み取り、その基板の実際の伸縮量に合わせて描画データを変形させられるためです。方式の詳細はダイレクトイメージ、LDI(レーザーダイレクトイメージング)、マスクレス露光装置をご覧ください。
DI露光の光源では、405nm(紫色)のバイオレットレーザーダイオードの採用が広がっています。2000年前後から一部で使われ始め、その後の20年で出力が当初の約20倍まで改良された結果、DI露光装置においてはショートアーク水銀ランプに代わる主要光源となりました。
これに対し、プリント基板用ステッパーの光源は、解像力の面で水銀ランプに優位性が残るため、現在も水銀ランプが多く使われています。同じプリント基板の露光でも、方式によって光源の置き換わり方が違うわけです。光源選択の考え方は露光装置の光源についてもあわせてご確認ください。
DI露光は万能ではありません。導入時には次の点を確認する必要があります。
近年は光源の多光束化、多ビーム同時描画、並列化によってスループットの改善が進んでいますが、量産品目と多品種少量品目でマスク露光とDI露光を併用する構成をとる工場も少なくありません。
プリント基板の露光を検討するうえで、半導体前工程のステッパーと同じ発想で装置を選ぶと判断を誤ります。両者は求められる性能の軸が異なります。
| 比較項目 | 半導体ウェーハ(前工程) | プリント基板・パッケージ基板 |
|---|---|---|
| 解像力の目安 | 数十nm〜サブµm | 数µm〜20µm程度 |
| 光源 | ArF・KrF・EUVなど深紫外以下 | 近紫外(i線・h線・405nm)が中心 |
| ワークの平坦性 | 高精度に管理されたウェーハ | 反り・うねり・段差がある |
| 寸法安定性 | 基本的に伸縮しない | 工程を通じて伸縮する |
| 重視される性能 | 解像度・重ね合わせ精度 | 焦点深度・伸縮補正・大面積スループット |
| レジスト膜厚 | 薄膜 | DFRなど厚膜が中心 |
プリント基板の露光では、「解像力を上げること」よりも「反った基板・伸びた基板で規格内に収め続けること」が実務上の主題になります。この違いが、深い焦点深度と補正機能を重視する装置設計につながっています。
装置や材料の検討では、次の項目を整理しておくと、メーカーとの技術的なやり取りがスムーズになります。
とくに、レジスト膜厚と目標線幅の組み合わせは装置選定の前提条件になります。同じ装置でも、DFRの膜厚が変われば得られる解像力と必要露光量が変わるためです。異物対策の考え方は露光工程にクリーンルームが不可欠な理由で解説しています。
プリント基板の製造における露光工程は、レジスト塗布と現像の間に位置し、配線の線幅と層間の重ね合わせ精度を決定づける工程です。導体パターン層とソルダーレジスト層で目的が異なり、それぞれに適した波長と装置構成が選ばれます。
方式としては、コンタクト・プロキシミティ・投影露光・DI露光が用途に応じて使い分けられます。基板が伸縮し反りを持つという前提から、深い焦点深度とスケーリング補正を備えた投影露光が重ね合わせ精度の厳しい領域を担い、多品種・短納期の領域ではDI露光が広がりました。DI露光の光源では405nmのバイオレットレーザーダイオードが主要光源となっています。
装置を検討する際は、目標L/S、レジスト膜厚、基板サイズ、品種数とロットサイズを先に整理し、マスク方式とDI方式のどちらが自社の生産構成に合うかを見極めることが重要です。露光装置の種類は露光装置の種類を徹底解説で全体像を確認できます。
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