オランダの企業ASMLは、半導体製造に必要なEUV露光装置の世界市場をほぼ独占しています。そのASMLが韓国に新拠点を設ける意味は半導体業界にとって大きな意味を持つのです。ASMLにとっても、日本円で約248億円の大型投資は初の試みです。
ASMLが拠点を設けるのは、サムスン電子の工場がある華城(ファソン)で、2022年11月16日に起工式が行われました。EUV露光装置の維持補修と部品の再利用のための再製造センター、半導体人材のためのトレーニングセンターが入ります。
ASMLが韓国に拠点を設けたのは、半導体業界を取り巻く大変動の影響です。たとえば、アメリカによる中国への半導体制裁でしょう。中国は半導体産業に国ぐるみで投資し台頭しましたが、アメリカにとっては脅威です。同盟国にも「先端半導体向けの製造装置を中国へ輸出するのは控えて欲しい」と協力を申請しました。結果、中国から撤退する企業も出てきたのです。ASMLは自動運転、クラウドコンピューティングやAIの成長で2030年まで、半導体市場は拡大すると見込んでいますが、アメリカが制裁したことへの影響は無視できません。中国市場は大きいため、むずかしいとなると利益面でマイナスです。
アメリカの中国への半導体製造装置制裁が理由のすべてといいきれませんが、ASMLにとっては韓国に新拠点を設ける理由のひとつになっているのでしょう。韓国はサムスン電子をはじめ、韓国SKハイニックスという先端半導体を製造する企業が多い国です。ASMLはEUV露光装置以外に半導体装置を1,000台以上納品しています。売上高約3割を占める勢いです。韓国にとっては願ったりかなったりでしょう。
韓国のサムスンやSKハイニックスは先端半導体を製造しています。しかし製造装置ありきであり、故障すると修理のためにASMLの装置をオランダまで送らなければなりません。韓国国内に拠点ができれば不要です。半導体装置部品を韓国内で調達すれば、韓国自体の半導体産業競争力のアップまで見えてきます。
ASMLはEUV露光装置を年間50台しか生産できません。半導体メーカーはその50台の確保競争もしています。物理的な距離が近いというメリットは、EUV露光装置の確保のしやすさを指摘する声もあるのです。韓国もASMLも安定した利益を得られるという意味で、WIN-WINの関係を築こうとしています。
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