まずは、露光装置の基本的な大きさや扱える範囲を把握しましょう。この記事では、装置選びの第一歩となるサイズスペックの重要ポイントをご紹介します。
露光装置を選ぶときに最初に見るのは、一度にどれだけの範囲を光で“なぞる”ことができるかという「露光(ろこう)エリア」です。これは、たとえばスマホの基板(きばん)くらいの大きさから、大きなテレビのガラスに相当するサイズまで様々です。小さな試作品や研究向けの装置なら、一辺が10センチほどの正方形に対応するものが多く、ミクロの部品を正確に写し取るのに向いています。一方、工場で使うような大きな基板向けでは、A3用紙(29.7×42センチ)くらいの広さを一度に処理できる装置もありますし、さらに大型のディスプレイ製造では、3メートル四方近くのガラスに分割しながら連続して光を当てるモデルも登場しています。この数字を見るだけで、自分の工場や研究室のテーブルに載るか、搬入できるかの目安になります。
「フットプリント」とは、装置を置いたときに床に接する面の大きさです。研究室の机に載せられる小型モデルなら、横幅50センチ、奥行60センチ、高さ65センチ程度、重さも100キロ前後と比較的コンパクトです。これが工場ライン向けの中型になると、幅1.5メートル、奥行2.6メートル、高さ1.9メートル、重さ800キロくらいと急に大きくなります。さらに大きなディスプレイ用装置は、幅8メートル以上、奥行11メートル、高さ6メートルとまるで倉庫のようなサイズになることもあります。寸法と重さは、搬入ルートに入るか、床がその重さに耐えられるか、最初に必ずチェックしたいポイントです。
装置を選ぶときは、次の5つを比べるとわかりやすいです。まず「露光エリア」(どれだけ大きな範囲を一度に処理できるか)、次に「解像度」(どれだけ細かい線まで再現できるか)、それから「寸法と重さ」、そして「装置内の部品がどれだけ正確に位置合わせできるか」、最後に「動かすために必要な周辺機器や環境」です。たとえば、同じ大きさの基板を扱う装置でも、使うランプやレンズの性能、ステージ(基板を動かす土台)の動かし方が違うと、値段やメンテナンスのしやすさに大きな差が出ます。これらを一覧表にまとめて、自社の用途や予算に合うかどうかを比べるのがおすすめです。
続いて、実際に装置を置く場所の条件を確認します。安全かつ効率的に運用するために必要なスペースや環境を整理していきます。
装置の前後左右には、実際に人が作業できるスペースが必要です。前後には最低でも1メートル、左右には50センチくらいの余裕があると、マスク(露光用の版)を交換したり、ランプを掃除したりするときに体を動かしやすく、安全に作業できます。もし背面に扉がある装置なら、その扉を開けるスペースも見込んでおくと、後から「開けたら壁にぶつかる!」というトラブルが防げます。
露光装置は、強い紫外(しがい)ランプや冷却用の水を循環させる装置が内蔵されています。そのため、装置の近くに十分な電源容量と、水や空気、真空を供給する配管のスペースが必要です。これら配管やケーブルは装置の背面や天井から通すことが多いので、設置前にどこを通すか、配線ダクトの位置と大きさを調べておくと工事がスムーズになります。
装置本体の重さは、研究用の小型でも100キロ以上、工場向けの大型になると数トンにも達します。床がその重さに耐えられるか、床下に補強が必要かを事前に確認しましょう。また、高精度に露光を行うには、微小な振動も大敵です。床そのものの振動を抑える構造にするか、振動を吸収する専用のテーブルを使うか検討すると、製品の品質を安定させやすくなります。
露光プロセスでは、ごく微小なゴミや温度・湿度の変化が失敗の原因になります。一般的には、空気中のゴミをフィルターで取り除く「クリーンルーム」という専用エリア(約0.1ミクロン以下の埃をほぼ除去できる環境)が必要です。温度は20℃±2℃、湿度は40~60%くらいを保つことで、材料の乾きすぎや湿りすぎを防ぎます。空調設備をきちんと計画し、定期的に温湿度を記録・調整できる仕組みを整えておくことが重要です。
ここでは、具体的な機種選びに役立つ観点を解説します。限られたスペースやコストを最適化しながら、実用性の高い装置を選ぶコツを押さえましょう。
設置スペースが狭い場合は、小型かつ半自動の露光装置が便利です。たとえば、直径150 mmほどの小さな基板を載せられる装置なら、机の上でも使えるモデルがあります。装置のカバーや電源ユニットを後ろや上に分けて配置できる設計のものもあり、床スペースを減らしながら必要な機能を確保できます。
最近は装置を縦に積むように、省スペース化を図ったモデルも増えています。装置の上部にフィルムやツールを置くトレイを設置することで、上下の空間を有効活用します。また、IoT技術で電力や水の使用を自動で最適化する機能を持つ装置も登場し、メンテナンスの手間を減らしつつ小さなフロア面積で運用できるようになっています。
装置を止めずに部品交換や掃除を行えるよう、メンテナンスドアがある側に十分な通路を確保しましょう。作業ステップ(踏み台)を装置側面に取り付けると、手元を安定させながら作業できるので、安全性も向上します。こうした気配りは、稼働中のトラブルを減らし、ダウンタイム(停止時間)を短くする効果があります。
導入プロセスをスムーズに進めるためには、事前準備が欠かせません。ここでは、現地調査から設置、関係部署との調整までの流れを見通しやすくまとめました。
装置を導入する前には、まず倉庫や工場の入り口から設置場所までの道順を確認します。クレーンやフォークリフトを使う場合は、天井高や柱の位置、ドア幅なども含めてクリアランスを測ります。床の強度や電源容量、配管・ダクトのスペースも漏れなくチェックシートにまとめ、関係者で共有しましょう。
搬入から稼働開始までを「現地調査」「基礎工事」「据付け」「調整試運転」という4つの段階に分け、担当者と期限を決めてガントチャートに落とし込みます。予期せぬ遅延を減らすため、各工程の前後関係とリスクを整理し、万が一の代替案も用意しておくと安心です。
設備担当、電気・配管担当、品質管理、清掃班など、複数の部署が関わります。それぞれの役割と責任を明確にし、導入後の運用マニュアルや緊急連絡網もあらかじめ整備しておくことで、問題発生時の対応を迅速に行えます。
装置選びは「露光エリア」「寸法・重さ」「設置環境」「メンテナンス性」の4つをバランスよく比べることが大切です。自社のスペースや用途に合ったモデルを選びましょう。
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