アメリカのメモリーメーカーMicron Technology社が、広島工場で将来的なEUV導入の可能性を見据えた上で、日本政府に対し規制緩和を働きかけています。背景にはMicron Technology社が2024年導入予定の1γか1ΔのDRAMに関するEUVリソグラフィ技術が、日本の高圧ガス保安法の壁にぶつかるからです。
1γまたは1ΔDRAMの生産ではEUVリソグラフィ技術を導入するといわれていますが、問題はASMLのEUV露光装置です。PPL 方式の光源ですが。問題は生産工程中の加圧スズタンクにあります。高圧状態のスズタンクからSn液滴を落下させてレーザーを照射する仕組みです。その加圧ガスタンクは、日本における高圧ガス保安法の適用対象になっています。導入、採用しようとしても、輸入や使用で厳しく規制される可能性があるのです。
日本ではPLL方式に変わり巨大加速器を使ったFEL方式のEUV光源を研究中です。ただ、FEL方式でも液化ヘリウムが冷却媒体の冷凍設備が高圧ガス保安法の規制対象になっています。両方のEUV光源が高圧ガス保安法の規制にひっかかるわけです。
もうひとつ大きな問題があります。冷凍機システムでは高圧ガス保安法に基づき、年1回保安検査を義務として実施しないといけません。自主点検ではなく、知事や安全保安協会や指定保安検査機関、認定保安検査実施者による保安検査です。問題は保安検査を受けるために、半導体製造装置を停めなければならない点です。
通常24時間365日稼働するシステムですから、保安検査は邪魔にしかなりません。将来的に半導体の量産を考えると悪影響をもたらすことが考えられるのです。
Micron Technology 社では規制緩和に関連し、日本政府に働きかけているようです。2022年11月16日広島工場の式典で記者会見が行われました。「広島工場で将来的にEUV導入の可能性を見据えて、日本政府に規制緩和の働きをしている」と同社SVP、グローバルオペレーション担当のManish Bhatia 氏が答えています。
広島県も2022年6月にすでに国に規制緩和を要請していました。「令和5年度施策に関する提案」内で「高圧ガス保安法等の規制について、国際基準・規格を活用し、簡素化・緩和を図ること」という内容です。
経産省は半導体を戦略物資と考えています。半導体産業振興を進めている最中です。半導体製造は年中無休が求められるのに、高圧ガス保安法の規制や保安点検による一時停止があるのは問題でしょう。半導体製造の活性化のため国がどう判断するか待たれています。
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