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半導体露光装置の価格について

「史上最も精密な機械」といわれる半導体露光装置の価格は非常に高額です。ここでは、光源波長別の露光装置の価格相場をご紹介します。

半導体露光装置は、利用する光源波長が短いほど微細なパターンが形成できるため、価格も高くなるとされています。

装置の価格相場は、波長ごとに、i線が約4億円、KrFが約13億円、ArFドライが約20億円、ArF液浸が約60億円、EUVが約200億円ほど。露光装置において、より微細な加工を行うためにはより大きなレンズを使う必要があり、次世代の露光装置はさらに大きくなる見込みです。このため、次世代EUV露光装置の量産機の価格は1台約480億円にもなると言われています。

各装置を製造販売する
主要メーカー

露光装置の世界シェアトップは、オランダに本社を置くASMLという会社です。2019年の露光装置全体の出荷額のうち81.2%をASMLが占めており、EUVとArF液浸という、2021年現在市場規模の大きな2つの露光装置で非常に高いシェアを誇っています。

ArFドライでは日本のニコンが、KrFではキヤノンが高いシェアを持っています。i線では、低価格路線で生き残りをかけるアメリカのVeecoが、キャノンに次いで第2位のシェアを占めています。

微細化以外で性能を上げる方法も

一方で、近年露光装置をはじめとする微細化によるプロセスコストの増大が指摘されています。特にEUV関連装置は高額なため、半導体メーカーの投資負担は決して少なくありません。このままでは微細化が進むほど原価がかかり、できあがった半導体の適性売価を上回ってしまうかもしれません。

このため半導体業界では、微細化に技術を進化させるよりも、複数の半導体チップを縦に積む「立体化」など、微細化以外の方法で半導体の性能を高めようとする動きも広がっています。

EUVばかりが必要とされているわけではない

露光装置と一口に言っても、必ずしもEUVで製造した超微細な半導体だけが求められているわけではありません。自動車用や産業用などに使われる半導体など、必要とされる半導体はバラエティーに富んでおり、これらの半導体は高密度、高集積よりも、省電力、耐熱、耐振動性などが求められるため、装置もi線やg線などの方が適している場合があります。i線やg線の露光装置なら、ArFやEUVに比べて格段にリーズナブルに導入することが可能です。

また、量産を行う業界などでは、露光装置のスループットが重視されています。スループットとは、どれだけ高速に回路パターンを露光できるかを示す性能のこと。スループットが上昇するとシリコンダイ1枚当たりの製造コストが下がるためです。

露光装置にかかるランニングコスト

半導体露光装置は、購入時の高額な初期投資だけでなく、日々の運用においても多大なランニングコストがかかる点が重要です。ここでは、その主な要因について解説します。

メンテナンスおよび保守費用

高精度な装置は、常に最適な状態で運用するために定期的なメンテナンスが必要です。専門技術者による定期点検、精密な調整、部品交換(レンズのクリーニングやキャリブレーションを含む)などが求められ、特にEUV装置などはその複雑さから保守費用が非常に高額になる傾向があります。

消耗品および交換部品のコスト

露光装置は、運用中に消耗する部品が多数存在します。例えば、光源用のランプやレーザー部品、ガス供給システムのフィルターなどが該当し、これらは使用状況に応じて定期的に交換する必要があります。こうした消耗品の交換費用は、装置の運用期間中に継続的に発生するため、トータルコストに大きな影響を与えます。

エネルギーおよび環境維持費

高出力の光源や冷却システム、大型の光学系を維持するためには多くの電力が必要です。また、装置を最適なパフォーマンスで運用するためには、クリーンルームなどの厳格な環境管理(温度、湿度、振動対策など)が求められ、これに伴うランニングコストも無視できません。

オペレーターの技術とトレーニングコスト

これらの高度な装置を正確に運用するためには、熟練した技術者が必要です。オペレーターの育成、定期的なトレーニング、最新技術の習得に伴う教育費用も、ランニングコストの一部として計上されます。

ダウンタイムによる生産ロス

装置が故障したり、メンテナンスのために停止する場合、その間の生産ロスも無視できないコストです。予防保全や迅速な修理体制の整備により、ダウンタイムを最小限に抑えることが求められます。

これらのランニングコストは、装置の初期価格と同様に、半導体製造における総所有コスト(TCO: Total Cost of Ownership)に大きな影響を与えます。特に最新のEUV装置のような高精度・高機能装置では、運用期間全体で見た場合のコスト負担がさらに増大するため、メーカーは購入後のコスト管理にも十分な戦略が求められます。

のように、半導体露光装置は単なる高額な投資対象にとどまらず、日々のメンテナンスや運用コストも大きな負担となります。製造プロセス全体のコスト最適化を図るためには、初期投資だけでなくランニングコストも含めた総合的な視点が必要となります。

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